不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−
もしかしたら、同じマンガを読んでいるかもしれないし、同じアーティストが好きかもしれない。
だけど毎回そうなる前に恋心は終わってしまうのだった。


「今回は違う。今回は絶対に違う」


私は鏡の中自分へ向けてそう言い聞かせた。
正広は優しい。
それは誰に対してでも同じだということはわかっている。

だからこそ、自分にもああして声をかけてくれているのだ。
だから、私にもみんなの同等にチャンスがあるはずなんだ。
冷たい水で化粧っ気のない顔を洗って熱を冷ます。

最近は不穏ラジオのおかげで自分の行動がアクティブになっていると自覚していた。
できればこの調子で恋愛も頑張っていきたい。
なによりも今の自分にはそれができると信じていた。

もう私は以前のような根暗女じゃない。
私は制服のポケットから色つきのリップクリームを取り出した。

唇が荒れるから持ち歩いているのだけれど、普段はあまり使わない。
間違えて色つきを購入してしまったせいで、周りからなにか言われるのではないかと、湖たかったからだ。

そのリップを丁寧に唇へ塗っていく。
これくらいのこと誰でもやってる。
違和感はない。

大丈夫。
たったそれだけで私の心臓は早鐘を打ったのだった。
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