ヴァンパイアは自分の親友である妹を離さない
「しお、ん……?」


最悪なタイミングで来てしまった。


あぁ。こんな姿、夜桜先輩にだけは見られたくなかったのに…。


好きな人に醜い姿を見られるなんて、もうおわりだ。
なにもかも。


「夜桜先輩。今まで楽しかったです」


「なんでこれが最後みたいな言葉を…っ。
紫音、お前はこれからどうするつもりなんだ?」


「どうするもなにも今までの生活に戻るだけです。
女の子の、ただの中学生として」


「たとえお前がどんな姿になったとしても、俺はお前が好きだ!」


「なっ!」


私が夜桜先輩の前から去ろうとしたのに、引き寄せられて抱きしめられた。  


どうして夜桜先輩はこんなにも優しくて、あたたかいんだろう。


「どうせ自分は化け物だからもう俺の側にはいられないとか言うんだろ?そんなの…俺が許さない。俺だってヴァンパイアだ。化け物なんだ」


「でも、でもっ…私のはそういうのじゃないんです!」


「でもじゃない!お前は俺がこんなに好きだって言ってんのに伝わらないのか!?」


「伝わってます。
だって私も…夜桜先輩のことが好きだから」


「紫音……」


このまま流れに身を任せてキスなんかしたらどれだけ気持ちいいんだろう。


夜桜先輩には、私の初めてを全部あげたい。

そう思ってたのに…。
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