メダカなキミ。
アキラはそのまま話を続ける。
「死んじゃう直前になって知ったんだよね。病気かと思ったら、まさか寂しかった、だなんて。そう思うと、頑張ってもう1匹、屋台で掬えたらよかったのにって後悔したよ。」
悲しい思い出を語るアキラが、由里はたまらなく愛しく思えた。
由里はアキラの腰に手を回し、そっと体を寄せると、アキラの肩にゆっくりもたれ掛かる。
「…悲しかったね。せっかくご両親に買ってもらった大切なメダカだったのにね。」
そう由里が言うと、アキラは俯き、頷いた。
「今思うと、なんだかそのメダカって俺みたいだなって思えるんだ。一人寂しく、孤独に、狭い世界で生きてる。…ホント、俺みたい。」
そして、自分の腰に回されている由里の腕の間をすり抜け、自分の腕も、由里の腰に回し、由里をゆっくりと引き寄せた。