メダカなキミ。
夏祭りの会場は、由里のマンションの近くにある神社だ。
歩いて行ける距離なので、由里とアキラは並んで神社へ向かった。
「アキラ君、甚平もよく似合うよね。かっこいい。」
由里がそう言うと、アキラは「由里さんからそう言ってもらえるなら、着た甲斐があったよ。」と優しく微笑んだ。
最初、アキラはジーンズにTシャツといういつもの格好で夏祭りに行くと言っていたが、由里がどうしてもと頼み倒してようやく、着てもらえたのだ。
その代わり、と言ってアキラは交換条件を出してきた。
「甚平を着る代わりに、由里さんに『アキラ』って呼んで欲しいって言ったのに、いつ呼んでくれるの?」
アキラが不貞腐れた表情で軽く文句を言った。
「んー、まだ恥ずかしくて。夜までには頑張って勇気出して呼ぶよ!」
由里が軽くガッツポーズしてみせたので、アキラは「そんなに難しいこと!?」とツッコみながら笑った。
「えー、だって私だけ呼び捨てっていうのもねぇ…」