忘れられないドロップス
「有桜ー、できた?」

「うん、できたー」

私がお昼に食べる卵のサンドイッチを大きめのランチバッグに飲み物と一緒に入れるのを見ながら、遥が細身の黒のデニムに白いパーカーを着ると、上から黒のミリタリージャケットを羽織った。

私がランチバッグを抱えようとしたらすぐに遥が肩から下げた。

「あんな、重いものは俺が持ってやるから有桜は持つな」

「え?でもそんな重たくないよ?」

「ばーか。重いとか重くないとか関係ねぇの。男が持つもんなの」

そういえば、随分前に遥と暮らしていた頃も、吉野からもらったお豆腐が入った袋を遥が持ってくれたことを思い出す。

「えと、ありがとう……」

そもそも初めての恋愛に初めての恋人ができた私は、なんだか遥を荷物持ちにしてるみたいで困ってしまう。

遥がそれに気づいたのか私を覗き込んだ。

「……何?俺が荷物持つとそんな気まずい?」

「あ、その……遥を……荷物持ちにしてるみたいで……その重たくないもの……持ってもらうと」

少しだけ天井に視線を向けた遥が困ったように笑った。
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