忘れられないドロップス
「うん……聞くから」

「私……あの女の人が遥との画像持ってることも……遥にあの女の人が触れるのも……嫌だったの……だから私ね」

自分でもあんなに他人に対して嫌悪感を感じたのは初めてだった。きっとあの(ひと)も寂しいを抱えてる。でもそれでも気づけば私はあの(ひと)を突き飛ばしていた。

──遥を守ってあげたくて。

遥が私を安心させるように、ふっと笑った。

「ヤキモチ妬いてくれてありがとーな。あと、俺のこと……ちゃんと分かっててくれてありがとな」

私の涙はやっぱりコロンと落っこちて、桜の花びらと一緒に春風に吹かれて攫われていった。

「おいで」

すぐに遥が痛いくらいに私を抱きしめる。

「遥……苦しいよ」

「……俺もう有桜しか見ないし……いらないからさ。どこにも行くなよ」

ぼやけた視界のまま見上げれば、遥が眉を下げて私の瞳から涙を掬った。

「好きだよ。何回でも言うし誓える。有桜が好きだから」

「うん……ひっく……」

遥が私の頭をポンポンと撫でながら、そっと唇にキスを落とした。遥のキスは魔法みたいだ。いつも甘くて少し意地悪で、でもいつだって私の涙を簡単にとめてしまう。

「さてと有桜泣き止んだし、飯にしよ。俺、有桜のたまごサンドすげぇ好き」

唇を持ち上げた遥を見上げながら、私は遥の切長の瞳をじっと見つめた。

どんなときも遥の瞳を見れば、恋しい気持ちと愛おしい気持ちが入り混じって遥にもっともっとくっつきたくなる。
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