忘れられないドロップス
「あの、渚さん予定日いつでしたっけ?」

私も大きく膨らんだ渚のお腹をそっと撫でる。このお腹の中に小さな命が宿っていて、もうすぐ会えるだなんて楽しみで仕方ない。

「もうあと十日くらいかな?秋介が暇さえ有ればLINEしてきてめんどくさいの。急に破水しても陣痛きても一人で産婦人科くらいいけるし、ほんとアタシを誰だと思ってんのかしらねー」

遥がケラケラ笑って、私もクスッと笑う。

「秋介の張り切りっぷり尋常じゃねーからな。あ、そういや、この間も秋介がたまごちゃんクラブ?とか妊娠中に読む雑誌めちゃくちゃ抱えてたけど?」

渚が肩をすくめた。

「そうなの。本屋から新しいのが出るたびに片っ端から買ってきて、妊娠も出産についても知識だけ頭でっかち……だれが産むと思ってんだか」 

そのとき扉がカランと開いた。そしてすぐに長身の男が駆け込んでくる。
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