【完結】鍵をかけた君との恋
「ただいま」

 夜の七時。父が帰宅した。

「お。乃亜、いたのか」

 ネクタイを緩める父。今日はもう、家で過ごすということだろうか。

「お父さん、夕飯は家で食べるの?」
「そうしようかなあ」
「珍しいね。クリスマスイブに家にいるなんて」
「ああ、今日はイブか。じゃあチキンでも食べるか?そこのスーパーで買ってくるよ」
「え」

 父の気紛れに驚いていると、彼は財布だけを持って、家を出た。


「乃亜とふたりだけだから、そんなに大きいのはいらないだろう」

 父が購入してきたのは、サラダの上に乗ったスライスチキンと少しの惣菜。彼はビール、私は麦茶で乾杯をした。

「どうだ?受験勉強は」

 テレビのチャンネルを変えながら、父は聞く。

「まあまあかな」
「そうか」

 画面の中、大いに騒ぐ芸能人。

「このチキン、美味しいね」
「ああ、そうだな」

 クリスマスの特番だからか、サンタのコスチュームに身を包んだモデルもいた。

「今日はどのチャンネルも、祭りだな」
「イブだからね」
「ビール、ビールっと……」

 唯一ニュースを放送していたテレビ局で画面を落ち着かせた父は、二杯目のビールを台所へと注ぎに行く。注ぎ終われば、また席に着く。

 食器の音。咀嚼音。事件現場の記者の声。父とふたりきりの食事は、いつからこんなに、つまらなくなってしまったのだろう。

「ごちそうさま……」
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