【完結】鍵をかけた君との恋
『あけましておめでとう!乃亜ちゃんも一緒に、初詣行かない?』

 アイドルのカウントダウンコンサートの映像を眺めながら微睡んでいた私に届いたのは、楓のメール。風呂上がりの湿った髪へ乱暴にドライヤーをあてて、スウェットの上にブルゾンを羽織った。玄関の扉が閉まるその隙間から、奈緒さんの声が聞こえてくる。

「こんな時間にどこ行くの?」


 マンションの下には、鼻の赤い陸がいた。

「陸。なんでいるの?」
「なんでって。楓が乃亜も初詣行くって言うからさ、迎えに来たんだよっ」
「こんなに近所だし、ひとりで行けるのに」
「ばか、夜中だろ危ねえよ。お前来るの遅すぎて、まじで凍え死ぬかと思った」

 鼻が赤い理由は寒いからだろうけど、耳が赤いのは、そのせいではないかもしれない。何故なら私も陸を一目見たその瞬間、照れてしまったから。

「新年早々、私の格好真似すんなし」
「うっせ。乃亜が俺の真似したんだろっ。もうちょっとお洒落しろよ」
「あー、出たっ。男はいいけど女はこうあれ的な、最低発言っ」
「ち、ちげえよっ」

 同じ色のスウェットに、これまた同じ色したブルゾン。なんだか体が痒くなる。
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