【完結】鍵をかけた君との恋
 カチャッと鍵が開く音と同時に慣れ親しんだ匂いがして、ここが陸の家だとわかった。

「ここ、あれら、りっくんの家ぇ?」

 呂律の回らぬ私の口を手で覆い、陸は囁く。

「しーっ。もう母さん達寝てるから」

 気持ち悪さを通り越し、今度は睡魔に包まれていた。
 ゆっくりと、ベッドにつく体。

「かえるらぁー」
「帰れねーだろこんなんじゃ。ほら、手ぇ伸ばして」

 苦労しながらブルゾンを脱がす陸をぼけっと眺めていれば、意識は遠ぬく。身軽になった途端ごろんと寝そべり、眠りに入る準備をした。

「おやしゅみーっ」

 そう言って夢へと落ちかけたその瞬間、いつもよりとろんとした陸の声が降ってきた。

「のーあっ」

 薄ら目を開けると、すぐそこには陸の顔。彼も私と同じくらい、酒の匂いを纏っている。「何?」と問う間もなく重なる唇。この甘酒味はどちらのものか。
 陸の全ての体重がベッドへ乗っかって、基盤がミシッと音を立てた。

 離れきらない唇で、陸が聞く。

「いい?」

 何に対して許可を求められているのかは、ダウンしきった脳でも判別できる。頷けぬままに陸を見つめていると、再びキスを落とされた。そして吐息だけで、彼は言う。

「愛してる」


 陸の手が腹部に伸びた。温度の違い過ぎる指先に全身ビクンと反応すると、彼は「ごめん」と笑っていた。しかしその指先も、ことが進めば次第に熱を帯びていく。

 ひとつになって、しばらく経って、陸が悲しそうな顔をした。

「陸?」
「離れたくない」
「え?」
「まだこのまま、乃亜と繋がっていたい……」

 動きを止めた彼は私に覆いかぶさると、耳元で何度も私の名前を口にした。それが仔猫の声より切なく感じて、気持ちが丸ごと溢れて出ていく。

「私も、陸とずっとこうしていたい」

 次に目が覚めた時、後悔すると知っている。勇太君を思えば苦しくなり、罪悪感に苛まれる。それでも私は求めてしまう。決して手に入れたくない陸を、愛してしまう。
 恋愛感情に終わりは付き物なのに、未だに抜けぬ彼への想い。
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