【完結】鍵をかけた君との恋
猫が鳴いた。ミャアと小さく、フェンスの向こうで。陸の手が、私の頬から剥がれて落ちた。
「終わるのが、怖い?」
呟くようにそう聞かれ、私はこくんと頷いた。
「乃亜は俺が好き。それは合ってる?」
その問いには縦に大きく首を振る。何度か振れば、涙がぽろぽろ出ていった。それを指で掬って陸は言う。
「わかった。じゃあふたりの気持ちを確かめ合えたし、この恋は綺麗なまんま、箱にしまっておくよ」
陸の優しい表情に、もっと涙が溢れていく。
「ごめんね……」
「謝るなよ。それが乃亜の答えならしょうがねえ。フラれたのに両想いって、なんか得した気分だし」
そう言って、無理矢理笑う陸を前に、私も懸命にえくぼを作る。
「これからも幼馴染、やってくれる?」
「おう。俺達はずっと、幼馴染な」
「ありがとう、陸」
「あ、でも」
軽く握った拳。陸はそれを、私の手元に持ってくる。
「手、開いて」
言われるがままに見せた手の平の上、陸の拳が解かれた。
「何?何もないけど」
「鍵、持ってて」
「鍵?」
「この恋をしまった箱の鍵。俺だとすぐに開けそうじゃん。だから俺が開けられないように、この恋の鍵は乃亜が持っててよ」
「それって……」
「なくすなよ」
目に見えぬ、かたち無き鍵を握りしめて家に着く。自室でぺたんと座り込むと、ピコンとメールの知らせが届く。送信元は陸で、写真だけが添付されていた。恋人ではないけれど、恋人同士のような陸と私のピースサイン。
手の平をじっと見る。可愛いらしいアンティーク調の鍵を思い浮かべてそこへ乗せ、再びぎゅっと握りしめた。
私は相当な自惚れ女だと思う。何故ならあの時。
この恋の鍵は乃亜が持っててよ。
乃亜のタイミングで箱を開けていいよって、そう言われた気がして、胸が高鳴っているのだから。
「終わるのが、怖い?」
呟くようにそう聞かれ、私はこくんと頷いた。
「乃亜は俺が好き。それは合ってる?」
その問いには縦に大きく首を振る。何度か振れば、涙がぽろぽろ出ていった。それを指で掬って陸は言う。
「わかった。じゃあふたりの気持ちを確かめ合えたし、この恋は綺麗なまんま、箱にしまっておくよ」
陸の優しい表情に、もっと涙が溢れていく。
「ごめんね……」
「謝るなよ。それが乃亜の答えならしょうがねえ。フラれたのに両想いって、なんか得した気分だし」
そう言って、無理矢理笑う陸を前に、私も懸命にえくぼを作る。
「これからも幼馴染、やってくれる?」
「おう。俺達はずっと、幼馴染な」
「ありがとう、陸」
「あ、でも」
軽く握った拳。陸はそれを、私の手元に持ってくる。
「手、開いて」
言われるがままに見せた手の平の上、陸の拳が解かれた。
「何?何もないけど」
「鍵、持ってて」
「鍵?」
「この恋をしまった箱の鍵。俺だとすぐに開けそうじゃん。だから俺が開けられないように、この恋の鍵は乃亜が持っててよ」
「それって……」
「なくすなよ」
目に見えぬ、かたち無き鍵を握りしめて家に着く。自室でぺたんと座り込むと、ピコンとメールの知らせが届く。送信元は陸で、写真だけが添付されていた。恋人ではないけれど、恋人同士のような陸と私のピースサイン。
手の平をじっと見る。可愛いらしいアンティーク調の鍵を思い浮かべてそこへ乗せ、再びぎゅっと握りしめた。
私は相当な自惚れ女だと思う。何故ならあの時。
この恋の鍵は乃亜が持っててよ。
乃亜のタイミングで箱を開けていいよって、そう言われた気がして、胸が高鳴っているのだから。