【完結】鍵をかけた君との恋
 コンビニまでの道すがら、気になったそれを陸に尋ねる。

「陸、バイト始めたの?」
「おう」

 バーベキューやボーリングに続き、これも初耳だ。

「なんのバイト?」
「ピザ屋の裏方。作る方」
「ふぅん」

 一気に削ぎ落とされていく、先ほどまでの喜楽の感情。

「陸って、私に何も言わないんだね」
「はあ?今言ったじゃん」
「違うよそれは。私が聞いたからじゃん」
「どっちでもよくね?」
「バーベキューの話も聞いてないし」
「バーベキュー?あー、高校のか。どうして乃亜が知ってんの?」
「凛花から聞いた」
「ああ、そっか。じゃあいいじゃん。俺からわざわざ言う必要ねえっしょ」

 相手の全てを相手の口から知りたいと思うこの気持ち、陸は私に抱かないのだろうか。

 この理不尽なヘソ曲がりが嫉妬だと勘付いたのか、陸は話題を変えた。

「乃亜は最近どうなんだよ。何してんの」

 たちどころに、仕返ししてやりたくなる。

「森君とふたりでお茶した」

 だから、細かい説明を省いたんだ。

「は……なんで森?元彼だろが」
「べつにいいじゃん。陸に関係なくない?」

 思惑通り、陸もすっかり不機嫌に。

「乃亜だって、何も俺に言わねえじゃん」

 外方を向いて舌を弾く陸を見て楽しくなるなんて、私は相当な性格の持ち主だと思う。

「陸、やきもち?」

 そんな陸に、もっと意地悪したくなるのだから、どうしようもない。

「森の野郎〜」
「森君ね、陸がボーリング圧勝したって悔しそうだったよ。今度私も行きたいな」
「この俺がアイツに負けるかよ。乃亜にも負けないぞ」
「森君と三人で行く?」
「は?じゃあ行かねえ」
「あははっ。うそうそ、ふたりで行こっ」
「絶対ふたりな」

 コンビニへ着くまでたった数分なのに、陸といると、心が忙しくてしょうがない。
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