【完結】鍵をかけた君との恋
「まじで助かるわ〜。店長が感謝してたよ!」
森君は満面の笑みでそう言った。彼から聞かされていた通り店長はとても良い人で、学生には色々な都合があるだろうと、シフトも柔軟に対応してくれるそうだ。人生初めて経験するバイトに、私は今までにない緊張と、新鮮さに溢れていた。
「はあ、疲れたあ」
夜七時。店長が持たせてくれたコーヒーを手に、家路を歩く。森君が隣で「お疲れ」と言った。
「初日だからね。覚えることたくさんあって大変だったでしょ」
「凛花といつも利用してるから、メニューだけは頭に入ってるんだけどなあ」
ここは地元で、並んで歩くのは地元の友達なのに、身につけている学校の制服が全く異なるのは、不思議な感覚だった。
「あー甘い」
店長がくれたコーヒーは、シロップたっぷりアイスのカフェラテ。
「乃亜それ飲める?甘いのも冷たいのも普段飲まなくない?」
「全部は無理かも。店長に申し訳ないけど」
森君の家と私の家との別れ道。手を振ろうとした私に、彼が待ったを入れた。
「ちょっと乃亜、これ持ってて」
自身のカップを私に寄越すと、彼の姿は曲がり角の向こうへ消えて行く。そしてほんの一分も経たぬうちに、小走りで戻ってきた。
「はいこれ」と差し出されたのは、ブラックの缶コーヒー。
「すぐそこに自販機あるの思い出したから。乃亜、これなら飲めるでしょ?」
喜びよりも、驚きの方が勝る。
「わ、わざわざ?」
「わざわざか?すぐそこだよ。あれ……それってどっちが俺のだっけ」
私の両手にはふたつのカップ。彼から持たされたものは、右か左か。
「……ごめん。忘れちゃった」
笑って「俺も」と言った彼は、まずひとつを取って缶を渡す。そしてもう一方も手に取ると、口をつけた。
「え!どっちかわかんないよ、それ」
「知らない人の飲み物じゃないし、両方もらっとくわ。俺甘いの好き〜」
「えー!なんか恥ずかしいんですけど!」
「はははっ。じゃあな乃亜、気をつけて帰れよー」
ナチュラル過ぎる彼の振る舞いに、それ以上何も言えくなり、大人しく手を振った。
温かいブラックコーヒーを飲んで思う。やっぱりこっちの方が好き。
森君は満面の笑みでそう言った。彼から聞かされていた通り店長はとても良い人で、学生には色々な都合があるだろうと、シフトも柔軟に対応してくれるそうだ。人生初めて経験するバイトに、私は今までにない緊張と、新鮮さに溢れていた。
「はあ、疲れたあ」
夜七時。店長が持たせてくれたコーヒーを手に、家路を歩く。森君が隣で「お疲れ」と言った。
「初日だからね。覚えることたくさんあって大変だったでしょ」
「凛花といつも利用してるから、メニューだけは頭に入ってるんだけどなあ」
ここは地元で、並んで歩くのは地元の友達なのに、身につけている学校の制服が全く異なるのは、不思議な感覚だった。
「あー甘い」
店長がくれたコーヒーは、シロップたっぷりアイスのカフェラテ。
「乃亜それ飲める?甘いのも冷たいのも普段飲まなくない?」
「全部は無理かも。店長に申し訳ないけど」
森君の家と私の家との別れ道。手を振ろうとした私に、彼が待ったを入れた。
「ちょっと乃亜、これ持ってて」
自身のカップを私に寄越すと、彼の姿は曲がり角の向こうへ消えて行く。そしてほんの一分も経たぬうちに、小走りで戻ってきた。
「はいこれ」と差し出されたのは、ブラックの缶コーヒー。
「すぐそこに自販機あるの思い出したから。乃亜、これなら飲めるでしょ?」
喜びよりも、驚きの方が勝る。
「わ、わざわざ?」
「わざわざか?すぐそこだよ。あれ……それってどっちが俺のだっけ」
私の両手にはふたつのカップ。彼から持たされたものは、右か左か。
「……ごめん。忘れちゃった」
笑って「俺も」と言った彼は、まずひとつを取って缶を渡す。そしてもう一方も手に取ると、口をつけた。
「え!どっちかわかんないよ、それ」
「知らない人の飲み物じゃないし、両方もらっとくわ。俺甘いの好き〜」
「えー!なんか恥ずかしいんですけど!」
「はははっ。じゃあな乃亜、気をつけて帰れよー」
ナチュラル過ぎる彼の振る舞いに、それ以上何も言えくなり、大人しく手を振った。
温かいブラックコーヒーを飲んで思う。やっぱりこっちの方が好き。