【完結】鍵をかけた君との恋
 起きろ起きろと無機質な電子音で訴えかけてくるアラームは、いつ何時(なんどき)耳にしても鬱陶しい。

「ん〜っ……」

 眠たい目をこすり開けるカーテンの先には、真夏と然程変わらぬ太陽。九月になれど、結局暑い。


「おはよー乃亜、宿題終わったあ?」

 元気一杯朝型の凛花(りんか)は、うちわで顔を扇ぎながら下駄箱に靴を入れた。

「なんとかクリア。凛花はバスケ部引退してからの夏休みだったから、大変だったでしょ」
「ほんとそれ。超ヤバかったけど昨日ギリギリ終わらせたよ」

 彼女は小学校からの友人で、私の親友だ。


「恋人のひとりもできないまま、とうとう中学生活終わるかも」

 自身の席に座るやいなや、凛花は溜め息をついた。

「これからはもう、受験まっしぐらじゃん?みんな、恋なんてしてる暇ないじゃん?ああ、中学の青春終わったわあ」

 べチンと机に顔を落とす凛花。私はそんな彼女に小声で言う。

「実は私、彼氏できたの」

 その瞬間、ガバッと顔を剥がした彼女に叫ばれた。

「この裏切り者お!いつの間に!」

 ぴゃあぴゃあと唾まで投げつけてくる。

「落ち着いてよ凛花っ。ほんと、つい昨日の出来事で、言う暇がなかっただけっ。隠してたとかじゃないから」
「だ、誰っ」
「勇太君」
「菊池勇太!?なんでまた学年イチの秀才と乃亜が……真逆じゃんっ!」
「どういう意味っ」

 ぷうっと頬に空気を入れて反抗すると共に、私は黒目を行き交わせた。勇太君はまだ、登校前のようだ。
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