【完結】鍵をかけた君との恋
「わっ。そのふたりで登校とか珍しっ」

 人目憚らず、自転車で通学路を進む凛花。陸と私の横で速度を落とした彼女に言った。

「凛花ってばまた自転車通学っ。そろそろ見つかるよー」
「平気だって。ピャーって行けばバレないバレないっ。じゃねっ」

 途端に風を切る彼女。その背中に目を奪われていると、背後から肩を叩かれた。

「乃亜っ、陸っ」

 振り返ると、そこには息を切らせた勇太君がいた。

「おはよう勇太君。どうして急いでるの?まだチャイムまで余裕あるよ」

 淡い色のハンカチを取り出して、額の汗を拭う彼。

「乃亜が見えたから、ついっ。今日は陸と一緒に来たんだね。俺もいい?」

 そう言うと、彼は私の手を握る。陸は不快な呆れ顔。

「んだよ、朝から見せつけんなよ。俺先行くわあ」
「ちょ、陸っ」

 私の声など完全無視で、陸はスタスタ行ってしまった。

「気なんて使わなくていいのにね」

 そう呟いた勇太君に、私も「ね」と苦笑で返した。
< 36 / 197 >

この作品をシェア

pagetop