【完結】鍵をかけた君との恋
「昨日の俺のメッセージ、見てくれた?」

 遠くで友達と合流した陸の姿を目にしていると、横からぬっと勇太君の顔が視界に入り込む。

「き、昨日?」
「うん。夜十時頃だったかな」

 昨晩十時の私は交番か陸の家か。どちらにせよ、恋人に伝えるような場所ではない。

「ご、ごめん。昨日は早くに寝ちゃってて」
「そうだったんだ。ならいいんだ」
「ごめん……」
「いいっていいって。急用じゃないし」

 ごめんともう一度言いかけた私は、一体何に対して謝りたいのだろうか。


「乃亜、寝過ぎっ」

 机にうつ伏せる私の頭頂部を、凛花はうちわの柄で小突く。

「もう放課後だよ。授業中ほとんど寝てたでしょっ。夜更かしでもしたの?」
「うんー……ちょっと女子会」

 こんな一日中やる気のない受験生を、同じクラスの勇太君はどう見ただろう。

 まだ眠い。帰ることすら面倒くさい。
 机からなかなか剥がれぬ己の頭に困っていると、ふいに呼ばれた名前。

「乃亜──」
「おい乃亜!」

 一瞬、勇太君の声がした気もしたが、ズズズと角度だけを変えた顔と共に目に映るは、扉付近にいた陸だった。
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