【完結】鍵をかけた君との恋
「怒涛の追い上げ!白組、一位でゴール!」
勇太君の瞬足に会場が湧く。ヒューヒューと揶揄うような声援も、そこら中から聞こえてきた。
「勇太君おろしてっ」
「ああ、ごめんごめん」
ゆっくりと地に足が着く。それでも未だ、ふわふわしていた。
「答え合わせをします!紙にはなんと書かれていましたか?」
進行役の生徒が勇太君にマイクを向けると、彼は息を整えながら、落ち着いて答えた。
「『大事な人』と書かれていました」
「では、ここに連れてきた彼女はあなたにとって──」
その瞬間腰に回された手で、ぴたりと彼に引き寄せられる。
「大事な恋人ですっ」
笑顔の彼とは対照的に、私は頭を抱えるほかにない。しかしそれもはたから見れば、ただの恥じらいとしか認識されず、たくさんの拍手を贈られた。
「末永くお幸せにぃ!」
最後、名も知らぬ進行役の生徒が放った言葉には、三角の目を向けておいた。
「お、おかえり乃亜……」
複雑な表情の凛花に迎えられ、私は席に着く。
「菊池勇太、大胆だね。全校生徒の前で堂々と彼女紹介とか、すごっ」
明後日別れる予定の彼氏との交際宣言。これは緊急事態にも近い状況だ。
「どうすんのよ……」
項垂れたまま、地面に嘆く。
「こんなことしたのにフったりしたらもう、全生徒敵にまわすじゃんっ。あの時のこのこ出て来たくせにって、お姫様抱っこで見せつけたくせにって」
「の、乃亜落ち着いて」
平常心でなどいられない。今すぐ地中深く穴でも掘って、皆の心からこの出来事が消去されるまで身を潜めていたい。
絶望したまま午前の部は終わり、昼休憩に入った。
勇太君の瞬足に会場が湧く。ヒューヒューと揶揄うような声援も、そこら中から聞こえてきた。
「勇太君おろしてっ」
「ああ、ごめんごめん」
ゆっくりと地に足が着く。それでも未だ、ふわふわしていた。
「答え合わせをします!紙にはなんと書かれていましたか?」
進行役の生徒が勇太君にマイクを向けると、彼は息を整えながら、落ち着いて答えた。
「『大事な人』と書かれていました」
「では、ここに連れてきた彼女はあなたにとって──」
その瞬間腰に回された手で、ぴたりと彼に引き寄せられる。
「大事な恋人ですっ」
笑顔の彼とは対照的に、私は頭を抱えるほかにない。しかしそれもはたから見れば、ただの恥じらいとしか認識されず、たくさんの拍手を贈られた。
「末永くお幸せにぃ!」
最後、名も知らぬ進行役の生徒が放った言葉には、三角の目を向けておいた。
「お、おかえり乃亜……」
複雑な表情の凛花に迎えられ、私は席に着く。
「菊池勇太、大胆だね。全校生徒の前で堂々と彼女紹介とか、すごっ」
明後日別れる予定の彼氏との交際宣言。これは緊急事態にも近い状況だ。
「どうすんのよ……」
項垂れたまま、地面に嘆く。
「こんなことしたのにフったりしたらもう、全生徒敵にまわすじゃんっ。あの時のこのこ出て来たくせにって、お姫様抱っこで見せつけたくせにって」
「の、乃亜落ち着いて」
平常心でなどいられない。今すぐ地中深く穴でも掘って、皆の心からこの出来事が消去されるまで身を潜めていたい。
絶望したまま午前の部は終わり、昼休憩に入った。