【完結】鍵をかけた君との恋
いつまでも泣きじゃくる私になど、いい加減愛想を尽かせばいいのに、陸は忠犬の如くずっと側を離れなかった。
「探せば日曜日でも開いてる病院はあると思うから、明日一緒に行こう」
普段の口調に戻った陸は、私の頭を撫でて言った。
「あ、でも万が一の時の為に、勇太にも声かけなきゃか」
その言葉で、枕から顔を剥がす。
「ゆ、勇太君には言わないで欲しいっ」
陸の眉間に皺が寄る。
「なんで……?アイツも病院行って、結果聞かなきゃダメだろ。張本人なんだから」
陸の方が正しいとわかっているから、伏し目がちになってしまう。
「私、明後日には勇太君と別れるつもりだったの。友達に戻る予定だった」
「だからなんだよ。関係ねえよ」
「関係あるよっ。妊娠してるかもしれないなんて、そんなことを勇太君に伝えて、もし……もしも『産んで』って言われたら、私、どうしたらいいの?」
「それは、無理って──」
「お腹の中の赤ちゃん、殺すの?」
陸の言葉を遮って、ありったけの不安を彼にぶつけた。陸では対処できぬと知っていて、それでもぶつける相手は彼以外にいなかった。
「私、高校行けないの?子供育てるの?」
上半身を起こし、陸の両腕を掴んで前後に揺さぶる。険しい表情の彼はただ、されるがまま。
「ねえってば陸!どうしたらいいのよ!」
壁一枚隔てた隣の部屋に、楓がいることも忘れ、私は泣き喚いた。陸の腕に力を込めて、やり場のない感情を押し付けた。
「乃亜、落ち着け」
「落ち着けないよ!」
「……大丈夫だからっ」
「何が大丈夫なの!」
「それは……」
「ほら、答えられないじゃん!大丈夫なんかじゃないじゃん!」
「乃亜っ」
言葉を選べなかった陸は、唇を重ねることで私の動きを止めた。
「んっ」
一度離して、彼は言う。
「ごめん、追い詰めた……今はもう、考えるのはよそう」
そして再び重なる唇。
優しいキスだった。その温もりに落ち着いた、安らいだ。勇太君との子をお腹に宿しているとするならば、私は最低な人間なのだろうけど、陸とのキスに夢中になってしまう自分がいた。
「探せば日曜日でも開いてる病院はあると思うから、明日一緒に行こう」
普段の口調に戻った陸は、私の頭を撫でて言った。
「あ、でも万が一の時の為に、勇太にも声かけなきゃか」
その言葉で、枕から顔を剥がす。
「ゆ、勇太君には言わないで欲しいっ」
陸の眉間に皺が寄る。
「なんで……?アイツも病院行って、結果聞かなきゃダメだろ。張本人なんだから」
陸の方が正しいとわかっているから、伏し目がちになってしまう。
「私、明後日には勇太君と別れるつもりだったの。友達に戻る予定だった」
「だからなんだよ。関係ねえよ」
「関係あるよっ。妊娠してるかもしれないなんて、そんなことを勇太君に伝えて、もし……もしも『産んで』って言われたら、私、どうしたらいいの?」
「それは、無理って──」
「お腹の中の赤ちゃん、殺すの?」
陸の言葉を遮って、ありったけの不安を彼にぶつけた。陸では対処できぬと知っていて、それでもぶつける相手は彼以外にいなかった。
「私、高校行けないの?子供育てるの?」
上半身を起こし、陸の両腕を掴んで前後に揺さぶる。険しい表情の彼はただ、されるがまま。
「ねえってば陸!どうしたらいいのよ!」
壁一枚隔てた隣の部屋に、楓がいることも忘れ、私は泣き喚いた。陸の腕に力を込めて、やり場のない感情を押し付けた。
「乃亜、落ち着け」
「落ち着けないよ!」
「……大丈夫だからっ」
「何が大丈夫なの!」
「それは……」
「ほら、答えられないじゃん!大丈夫なんかじゃないじゃん!」
「乃亜っ」
言葉を選べなかった陸は、唇を重ねることで私の動きを止めた。
「んっ」
一度離して、彼は言う。
「ごめん、追い詰めた……今はもう、考えるのはよそう」
そして再び重なる唇。
優しいキスだった。その温もりに落ち着いた、安らいだ。勇太君との子をお腹に宿しているとするならば、私は最低な人間なのだろうけど、陸とのキスに夢中になってしまう自分がいた。