【完結】鍵をかけた君との恋
「こんなとこへ呼び出して、なんの用?」

 翌朝のホームルーム。そこに勇太君の姿はなかった。

「学校の屋上って入っちゃいけないんだよ?受験生なのにバレたらどうすんの?陸が責任とってくれよな」

 どうしていないのだろう。

「ああ、責任とるよ」
「で、用件は何?」
「勇太さあ、乃亜が別れたいって言ってんだから、別れてやれよ」
「は?」
「どうせ、お前が駄々こねたんだろ」
「……悪いけど、乃亜が昨日俺にくれた言葉知ってる?」
「そんなん知らねえよ」
「なら教える。『俺がお腹の子の父親で良かった』って、そう言ったよ」

 ドゴッ!
 
 勇太君がなかなか教室に現れないのは、もしかすると昨日の電話が関係しているのではないかと、胸騒ぎが止まらなかった。

「いってえ……」
「勇太が避妊しなかったから乃亜は苦しんでんだよ!それなのに何が父親だよふざけんな!結婚もできねえ年齢で乃亜のこと孕ませやがって!アイツがどれだけ辛い思いしてんのか、知ってんのかよっ!」
「……相変わらず、陸は熱いな」
「はあ!?」
「予想通り、陸はもう知ってたんだね、妊娠のこと」
「そうだよ、もうこれ以上乃亜を悩ますな!別れてやれよ!」
「おい離せよ。陸には関係ないだろっ」
「関係あんだよ!大体お前は勝手すぎんだよ、ただヤりてーだけのオスだよ!自分の所有物みたいに色んなとこキスマークつけて、乃亜を囲ってるだけじゃねえか!」
「おい、陸」
「んだよっ」
「色んなとこのキスマーク……?首以外は俺、脱がなきゃ見えない箇所にしかつけてないんだけど」
「あ、やべ」

 ボゴッ!

 時計を見る。もうそろそろ、ホームルームが終わる。

「……ッテエ」
「陸も結局変わらないじゃないか!人の彼女と勝手に寝て、何を俺に忠告してくれてんだよ、ふざけんな!」
「お、俺はっ」
「ヤりたいなら人の恋人でも構わない。陸の方が、よっぽどただのオスだよ」
< 91 / 197 >

この作品をシェア

pagetop