冷徹御曹司は想い続けた傷心部下を激愛で囲って離さない
「言っただろう。俺はこれまで仕事が優先で、ほかは二の次だったと。その俺が、自分でも呆れるほど今は余裕がない。わかるか? うかうかしていたら、また別の男に取られるだろうが。社内で次の約束を急かさずにはいられず、移動中もどうすれば俺の女になるのかと、そればかり考えている」
「また?」
「ああ、いや、それは言葉のあやだ。とにかく、遊びと思われるのは心外だ。キスも、あさひだからしたかった。今も、声を聞くだけでは不満なんだが」
「どうして……そこまでおっしゃるんですか?」
戸惑いを隠しきれないといった風に、あさひが尋ねる。凌士は間髪いれずに答えた。
「あさひがいい女だと知っているからだ」
「……」
返事がなく、さらに焦燥が募る。競合他社に技術開発で先行されたときでも、これほど焦ったことはない。
自分が今どんな顔であさひを口説こうとしているのか、考えるだにみっともなくて頭を抱えたくなる。
それでもここであさひに引き下がられるのだけは避けたく、凌士は言い直した。
「飯でも、ドライブでも、心から楽しめた。こんなことは子どものころ以来かもしれない。……それが理由だ。あさひの顔が見たい」
電話の向こうで、沈黙が落ちる。
「とにかく、電話じゃらちが明かない。話がしたい」
「じゃあ……」
あさひがおずおずと切りだす。
凌士はわれ知らず、唾を飲みこんだ。柄にもなく必死な自分が愚かに思える。だが別にかまわなかった。
「明日、駅まで迎えにいってもいいですか?」
「また?」
「ああ、いや、それは言葉のあやだ。とにかく、遊びと思われるのは心外だ。キスも、あさひだからしたかった。今も、声を聞くだけでは不満なんだが」
「どうして……そこまでおっしゃるんですか?」
戸惑いを隠しきれないといった風に、あさひが尋ねる。凌士は間髪いれずに答えた。
「あさひがいい女だと知っているからだ」
「……」
返事がなく、さらに焦燥が募る。競合他社に技術開発で先行されたときでも、これほど焦ったことはない。
自分が今どんな顔であさひを口説こうとしているのか、考えるだにみっともなくて頭を抱えたくなる。
それでもここであさひに引き下がられるのだけは避けたく、凌士は言い直した。
「飯でも、ドライブでも、心から楽しめた。こんなことは子どものころ以来かもしれない。……それが理由だ。あさひの顔が見たい」
電話の向こうで、沈黙が落ちる。
「とにかく、電話じゃらちが明かない。話がしたい」
「じゃあ……」
あさひがおずおずと切りだす。
凌士はわれ知らず、唾を飲みこんだ。柄にもなく必死な自分が愚かに思える。だが別にかまわなかった。
「明日、駅まで迎えにいってもいいですか?」