冷徹御曹司は想い続けた傷心部下を激愛で囲って離さない
 コンビニに寄ってから、凌士の家に向かう。手は繋がれたままだった。まるで、離すまいとするかのようだった。
 凌士の家は、泥酔して泊まったとき以来だ。
 あさひは玄関でパンプスを脱ぎながら、目線をあちらこちらへさまよわせる。

「突っ立ってないで上がれ」
「はい……」

 返事をしつつ、どうしてか足が動かない。
 先にリビングへ入った凌士が、廊下の途中で立ち止まったあさひに気づく。凌士はジャケットを脱ぎ、片手でネクタイをゆるめながら引き返してきた。

 苦笑とともに、頬に触れられる。

「悪いが、帰す気はないぞ」

 欲求に素直だ。凌士の目にはいっさい迷いがない。
 あさひは思わず凌士の腕をつかんだ。

「ほんとうに……わたしでいいんですか?」
「まだわからないのか? 俺は、好きでもない女を部屋に呼ぶほど暇じゃない」
「好……って」

 あさひがかあっと頬を染めれば、凌士が目を細めて頭を屈めてくる。

「好きだ、あさひ」

 あさひは目を閉じて、凌士の唇を受け入れていた。抵抗する気持ちはどこにも見つからなかった。
 唇の施しは優しく、そのくせやや強引だ。あさひは逃げないのに。

「いい加減、あさひも俺を好きになれ」

 角度を変えるたびに、キスの深さが増していく。
 甘い媚薬を流しこまれたみたいに、頭の芯がじんと痺れる。
 とうとう腰が砕けそうになったとき、凌士の手が腰に回った。

 ぞくりと肌が粟立つ。
 力が入らない。

 あさひは抱き寄せられるがまま、凌士にもたれた。ほとんど同時に覆い被され、さらに深いキスを仕掛けられる。
 あさひも喉を反らし、凌士の首に腕を回して受け止める。

「そろそろ抱かれる気になったか?」

 無意識にとろりとした目で凌士を見上げると、凌士が絶対的な王者の笑みを見せた。
 甘やかな支配の予感がする。凌士があさひを抱きあげた。
 迷いのない足取りでリビングを過ぎ、寝室へ足を踏み入れる。

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