冷徹御曹司は想い続けた傷心部下を激愛で囲って離さない
「今日はやけに積極的だな」

 欲に濡れた目が、薄暗い寝室のベッドで下から見あげてくる。あさひはたまらず、凌士からベッド脇のスタンドライトへ目を逸らした。

「っ、わたしだって、積極的になる日はあります」

 照明は最小まで絞られているものの、凌士の引き締まった肌に陰影を落としている。あさひは羞恥をこらえながら、凌士と繋がるべく腰を落とした。

 思ったより艶めいた吐息が零れる。そのことも恥ずかしい。
 すでにたっぷりと愛されて、体じゅうが汗ばんでいる。髪だって乱れている。
 けれど気にする余裕もない。

 プロポーズを断っても、恋情は変わらない。せめて、あさひのすべてで凌士に想いを伝えたかったのだ。

(待っててください。お願い)

 海を漂う船が杭に舫いを繋げるように、あさひも凌士に手を伸ばす。
 凌士はあさひの意図を察したのか、すぐさま力強く握りしめた。

「可愛いな、あさひは。俺の思いどおりにならないのが、厄介だが」

 下から強く突きあげられ、あさひは凌士の上で仰け反る。息も浅く離れそうになるあさひを、凌士がぐっと手をつかんで引き戻した。

 骨が溶けたかと思うほど、あさひは体を大きくしならせる。
 ベッドが軋み、甘い声が立て続けに口をつく。あさひも体を倒し、与えられる恍惚に抗い、懸命に凌士の引き締まった肌に唇を寄せる。

 でも気を抜くとすぐに、凌士に翻弄(ほんろう)されてしまう。指先から、唇から、凌士の感情が強く伝わってくるから。

「俺の女は、いつ落ちてくるのだろうな」

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