冷徹御曹司は想い続けた傷心部下を激愛で囲って離さない
 凌士があさひの手から食器を受け取り、スポンジの泡をまとわせていく。あさひは食器をふたたび受け取り、泡を流す。
 ふたりでするその作業が、今のあさひにはごく自然に感じられる。
「どうだ? ただ俺のそばで、幸せになればいいだけなんだが」
「それなら、自信があります。一生、一緒にいてください」
 凌士がつかのま、目をみはった。骨張った指の先が、あさひの真意を探るように耳朶に触れる。
 あさひがその手に自分の手を重ねると、凌士はあさひの顎を優しくすくい上げた。
 切れ長の深い色をした目にあさひが映る。
「やっと、俺のところにきたか。あさひ、愛している」
 返そうとした言葉は、すべて凌士の唇にのみこまれる。
 キスはまたたくまに深くなり、あさひの頭は早くも甘く痺れ始めた。


 
 凌士は寝室に場所を変えると、あさひの肌に丹念に触れていった。
 まるで、ひとつひとつ自分のものだと確かめるような仕草だ。……けれど。

「凌士さん、なんか今日は違います……?」

 あさひは息を浅くしてうつ伏せでシーツを握りしめつつ、凌士をふり仰ぐ。
 電気をつけたままの明るいベッドの上で、凌士の均整の取れた体がつぶさに見てとれる。凌士が、あさひのすべてを見たいからと、電気を消すのを拒んだのだ。
 ただならぬ色気に当てられ、あさひは弾かれるようにしてうつ伏せに戻った。

「わかるのか」

 凌士が思わせぶりに小さく笑うと、あさひの腰から背中をなぞる。
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