鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~

嫉妬と焦りとファンファーレ

 アーロンと一緒の下校も、正直なところ気が乗らない。
 もしもマニフィカ家に馬車の派遣を要請できるのなら、今日は自分で帰ります、と言っていたところだろう。
 婚約後、アークライト家からの援助も受けるようになり、馬車を持つぐらいの余裕は出てきたものの、登下校は変わらず一緒だった。
 婚約者として仲を深めるいい機会だ、アーロンも継続を希望している、ということで、ここは変更なしなのである。

 それぞれ部活動を終え、いつもの待ち合わせ場所で落ちあい、馬車に乗る。
 しかし、今日の合同授業でのことが頭から離れないマリアベルは、彼と話す気になれなくて。
 しん、と静かな彼女の隣で、アーロンは困惑していた。

――ベル、どうしたんだろう。僕、なにかしたかな!?

 お昼休みも今も、マリアベルの様子がおかしい。
 マリアベルだって人間だから、元気のない日だってもちろんある。
 けれど、今日はただ元気がない、疲れている、といった感じではなくて。
 意図的にアーロンを避けている、会話することを拒絶している。そんな雰囲気だった。
 
「べ、ベルー…?」

 冷や汗をかきながらも、機嫌を伺うように彼女に笑いかける。
 マリアベルは、返事をせずぷいっとそっぽを向いた。

「……!」

 婚約前も婚約後も、彼女にこんな態度をとられることはなかったため、アーロン、大ショックである。
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