鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
エピローグ

二人の歩幅で、未来へと

 あの合同授業を機に、二人の仲は、ゆっくりと、けれど着実に前に進み始めた。
 いつしかマリアベルは、自分の中に嫉妬心があることや、彼に笑顔を向けられたい、優しく触れて欲しい、と思っていることに気が付いて。
 アーロンは、照れや甘え、嫉妬心をだんだんと見せるようになった彼女が愛おしくてたまらなかった。

 マリアベルとアーロンのあいだに甘い雰囲気が漂い始めたことに、最初に気が付いたのはクラリスだ。
 元々勝気な彼女は、

「ベルお姉さまから離れてくださいませ!」

 とアーロンにつっかかったが、

「婚約者なのに、なにか問題が?」

 と、笑顔でかわされてぐっと言葉に詰まっていた。
 まあ、人目のある場所でべたべたしすぎたり、甘ったるい雰囲気を出しすぎたりするのがよくないのは確かなため、クラリスの苦言もある程度は聞き入れられた。
 彼女はマリアベルをいじめようとした過去を持ち、今はアーロンを敵視しているが、言っていること自体はさほど間違っていなかったりもするのだ。
 彼女も在学中に婚約者が決まったが、それはそれ、これはこれで、マリアベルに憧れる気持ちは変わらない……らしい。
 
 
 コレットは、もう完全に友人たちを見守るモードだった。
 昼休みなどは、アーロンに食って掛かるクラリスを眺めながら、

「今日もやってますねえ……」

 と、のほほんとしている。
 元々魔法特待生であったことに加えて、魔法の名家のミゲルの推薦もあり、王立学院卒業後は、魔法省で働くことが早期に決まっていた。
 王都に住むことになるため、卒業後も、学院でできた友人たちと顔を合わせる機会があるだろう。
 特にマリアベルは、正式にアーロンと結婚したあとも、魔法省に出入りすることになっている。
 こちらもミゲルの推薦……もとい、彼女に奥様業だけをさせるわけにはいかない! この才能を逃すべきではない! という熱弁のもとに決まったことである。
 貴族と平民という違いこそあれど、魔法特待生二人の関係は、これからも続いていく。
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