鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
「……ベル。正直に、答えてくれないかな。きみは、学院に通いたい?」
「それは……」
「たしかに、きみが学生になれば、領地の守りは薄くなる。それをきみが不安に思うのも理解できる。だから、無理に入学しろとは言わないよ。でも、もしも入学を希望するなら、僕も力になれるかもしれない。素直な気持ちを、教えて欲しい」
「わたし、は……」

 マリアベルが、きゅっと唇をかんだ。
 少しの沈黙ののち、彼女は顔を上げる。
 空色の瞳が、アーロンをまっすぐにとらえた。

「王立学院に、通いたい、です」

 叶うはずのない夢を口にしているかのような、どこか苦し気な言葉。
 きっと、これがマリアベルの本心なのだろう。

「そっか。わかった」

 彼女の願いを聞き届けたアーロンは、ふっと優しく微笑んだ。

 

 後日、マニフィカ伯爵家に、王立学院から手紙が届く。
 手紙、とはいったものの、封筒は大きい。
 それなりのサイズの紙を、折り曲げずに入れられる程度の作りだ。
 どうせ入学できないと諦めていたから、マリアベルから学院に接触したことはない。
 なのに何故、自分宛てにこんなものが届くのだろう。

「なにこれ? なんか分厚いし……」

 はて、と思いながらも、マリアベルは封筒の中身に目を通す。
 そこには、なんと。
< 18 / 113 >

この作品をシェア

pagetop