鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
 アーロンは、思う。
 これは本当にまずいことになった、と。
 マリアベルは美人だ。見た目だけでいえば、妖精のように儚げな美しい人。
 これだけでも、マリアベルと結婚したいと手をあげる男はいくらでもいるだろう。
 さらにそこに魔法の名手、鮮血のマリアベル、なんて称号が加わったものだから、なにかに目覚めかける男まで発生している。

 マリアベルはこれから、アーロンを凌ぐ勢いで異性人気を得ていくだろう。
 既に妙なファンまで発生しているのが、また厄介だ。
 今までマリアベルが破談続きだったこと、彼女のよさを知る男が他にいなかったことにあぐらをかいていたアーロン。超がたくさんつくほど焦り始める。

 なんとかパーティーを乗り切ったアーロンは、マリアベルとともに帰りの馬車に乗り込んだ。
 本日のマリアベルの美しさへのあまりの反響に、彼は焦って焦って。
 彼女が他の男にとられる場面を想像して、怖くなって。
 自分でも、なにがなんだかわからなくなってしまって。

「はー終わったー!」

 と自分の隣で安心するマリアベルに、声をかけた。

「……ベル」
「はい。どうしました?」
「……僕と、結婚して欲しい」
「はい?」

 アーロンは、順番とか、タイミングとか、雰囲気とか、そういうものを全て無視して、彼女にプロポーズしてしまったのだった。
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