鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
「では、アーロン様。またあとで」
「うん。今日も頑張ってね」
1年生のマリアベルと、2年生のアーロン。
当然、クラスもカリキュラムも別だ。
だから、学園到着後は分かれてそれぞれの教室へ向かうことになる。
棟も別なため、二人はそれぞれの建物を繋ぐ渡り廊下で会話をしていた。
マリアベルは貴族なのに特待枠という、ちょっと特殊な子だが、今のところ、いじめなども受けずに済んでいるようで。
アーロンに背を向け、足取りも軽く歩き出す。
楽しそうに進む彼女に手を振って、見送ろうとしたアーロンだったが……ふと、「いたずら」を思いつく。
マリアベルは気にしていないようだが、アーロンだって、既に彼女にプロポーズをかましてしまった身。
このまま何もせず引き下がるつもりは、なかった。
マリアベルに、自分を意識して欲しい。
この子には、自分という男がいるのだと、見せつけたい。
きっとこれから、マリアベルは色々な男からのアピールを受けることになる。
その前に、けん制したかった。彼女の恋愛対象になりたかった。
「ベル、待って」
「アーロンさ、ま……?」
彼女を追い、声をかけて、その小さな手をとる。
マリアベルが振り返ったことを確認すると、彼女の手の甲に、そっとキスを落とした。
「いってらっしゃい、ベル」
甘い微笑みの、おまけ付きで。
目撃してしまった女生徒からは「ひゃっ……」と小さく悲鳴があがった。
武の名門、アークライト公爵家の嫡男。
剣の腕は相当なもので、身体も鍛えている。
だが、顔立ちは甘く優しい美男で。
あの優しげな顔の下に、どんな身体を隠しているのかしら!? と女子たちが盛り上がっているほどだ。
日のあたり方によっては銀にも見える金髪と、はちみつ色の瞳は、彼の甘い雰囲気を引き立てている。
そんな男による、極上の笑みと手の甲へのキス。
他の女生徒なら、卒倒するかもしれない。
いくらでも金は積む、代わってくれ! とご令嬢に言われてもおかしくないポジションにいる、マリアベルはといえば。
「……」
突然のことにぽかんとしたのち、
「……いってきます!」
と普通に返し、1年生の教室へと向かっていった。
アーロンの渾身の一撃。無事にかわされた。
これは……脈なし!?
と、ずうんと肩を落としながら、アーロンも自分のクラスへと歩を進めていく。
じゅっぎょう! じゅっぎょう! とるんるんのマリアベルと、がっくりするアーロンが、反対方向へ進んでいく中。
二人を、木の陰からこっそりと覗き見る者がいた。
「マリアベル・マニフィカ……!」
るんたったと歩くマリアベルを見つめる彼女の瞳には、確かな敵意が宿っていた。
「うん。今日も頑張ってね」
1年生のマリアベルと、2年生のアーロン。
当然、クラスもカリキュラムも別だ。
だから、学園到着後は分かれてそれぞれの教室へ向かうことになる。
棟も別なため、二人はそれぞれの建物を繋ぐ渡り廊下で会話をしていた。
マリアベルは貴族なのに特待枠という、ちょっと特殊な子だが、今のところ、いじめなども受けずに済んでいるようで。
アーロンに背を向け、足取りも軽く歩き出す。
楽しそうに進む彼女に手を振って、見送ろうとしたアーロンだったが……ふと、「いたずら」を思いつく。
マリアベルは気にしていないようだが、アーロンだって、既に彼女にプロポーズをかましてしまった身。
このまま何もせず引き下がるつもりは、なかった。
マリアベルに、自分を意識して欲しい。
この子には、自分という男がいるのだと、見せつけたい。
きっとこれから、マリアベルは色々な男からのアピールを受けることになる。
その前に、けん制したかった。彼女の恋愛対象になりたかった。
「ベル、待って」
「アーロンさ、ま……?」
彼女を追い、声をかけて、その小さな手をとる。
マリアベルが振り返ったことを確認すると、彼女の手の甲に、そっとキスを落とした。
「いってらっしゃい、ベル」
甘い微笑みの、おまけ付きで。
目撃してしまった女生徒からは「ひゃっ……」と小さく悲鳴があがった。
武の名門、アークライト公爵家の嫡男。
剣の腕は相当なもので、身体も鍛えている。
だが、顔立ちは甘く優しい美男で。
あの優しげな顔の下に、どんな身体を隠しているのかしら!? と女子たちが盛り上がっているほどだ。
日のあたり方によっては銀にも見える金髪と、はちみつ色の瞳は、彼の甘い雰囲気を引き立てている。
そんな男による、極上の笑みと手の甲へのキス。
他の女生徒なら、卒倒するかもしれない。
いくらでも金は積む、代わってくれ! とご令嬢に言われてもおかしくないポジションにいる、マリアベルはといえば。
「……」
突然のことにぽかんとしたのち、
「……いってきます!」
と普通に返し、1年生の教室へと向かっていった。
アーロンの渾身の一撃。無事にかわされた。
これは……脈なし!?
と、ずうんと肩を落としながら、アーロンも自分のクラスへと歩を進めていく。
じゅっぎょう! じゅっぎょう! とるんるんのマリアベルと、がっくりするアーロンが、反対方向へ進んでいく中。
二人を、木の陰からこっそりと覗き見る者がいた。
「マリアベル・マニフィカ……!」
るんたったと歩くマリアベルを見つめる彼女の瞳には、確かな敵意が宿っていた。