鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
「送迎していただいている身で、申し訳ないのですが……。私、ここに入りたいです」
「……そっか。時間のことは気にしなくて大丈夫だから、きみは、きみの望むように……」
「そうだよお! 時間なんて気にすることないよ! アーロンだって部活に入ってるんだから!」
「え!?」

 そんな話は聞いていなかったマリアベル、ミゲルの言葉に驚いた。
 
「で、でも、今まで、授業が終わったらすぐ一緒に帰ってましたよね!?」
「あ、あー……。ええと……。たまには休養も必要かなーと……」

 アーロンは、武の家の人間らしく、武術系の部活を兼部している。
 そのことを黙って、マリアベルの送迎に名乗りをあげたアーロン。
 彼は新学期に入ってからずっと、部活を休んでいた。
 とはいえ、まだ2週目が始まったばかりだから、たいした期間ではないのだが。
 慌てるマリアベルと、しどろもどろなアーロン。
 制服姿の二人が並ぶ姿を見て、ミゲルはぴんときた。

「ああ……。ベルちゃんの送迎してるんだっけ? 1年生の彼女に合わせて部活休んでた感じ? 制服なのも、ベルちゃんとお揃いがよかったってわけだ」
「ちょっと黙ってろ。ベルちゃん呼びもやめろ」
「制服……? そういえば、さっき、前は私服登校だったって」
「……お揃いに、したかったんだ」
「え?」
「ベルが制服登校だから、じゃあ、僕もって……」

 素直にこう答えてから、アーロンはちょっとだけ後悔した。
 好きな子とお揃い! 勝手にペアルック! とか流石にちょっと気持ち悪くないか? と。
 しかしマリアベルは、「そうだったんですね」と朗らかだ。
 
「アーロン様とお揃い、嬉しいです!」

 無邪気にそんなことまで言い出すものだから。
 アーロンは、彼女の言葉を深読みしそうになり、どきっとした。
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