鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
 だが、そんなマリアベルだって、コレットにも危害が及ぶとなれば、黙っている気はなかった。
 アーロンが登場しなければ、クラリスに奪われたクッキーはマリアベルが取り返すつもりだったのだ。
 その場合は、これまでの戦闘経験をもとにしたちょっと強引なやり方になっていただろうから、平和的にこの場をおさめてくれたアーロンには感謝している。

 そのあと、アーロンは、こういったことは日常的に起きているのか、起きるタイミングはいつかとマリアベルに質問。
 放課後の魔研活動中は大丈夫。
 マリアベルが言うには、始業前と、授業の合間。それから、昼休みにこのようなことが起きることもある、とのことだった。

「そっ、か……」

 マリアベルがしれっといじめられていたことを知り、アーロンはどうしたものかと考えを巡らせる。
 学年もクラスも違うアーロンは、いつも彼女のそばにいられるわけじゃない。
 けれど、せめて昼休みだけでも一緒にいれば……。
 公爵家のアーロンが近くにいる以上、それ以下の家柄の者は、マリアベルに手出しができないはずだ。
 公爵家同士であっても、国の剣とまで呼ばれるアークライト家の嫡男の前で、アーロンが大切にする人をどうこうできる者は、そうそういない。
 
「あのさ、ベル。女子二人に割り込むようで、申し訳ないんだけど……。僕も、お昼をご一緒してもいいかな? 実は、ちょっと前から僕もお弁当を用意するようになったんだ」

 アーロンは、遠慮がちに笑いながらも、昼食が入った小さなバッグを掲げてみせた。
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