鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~

とられてたまるか

 男に囲まれる想い人の姿を見たアーロンは、笑顔のままびしっと固まった。
 しかし、すぐに気を取り直す。
 女子同士なら少しは控える気持ちのあるアーロンだったが、相手が男となれば遠慮はしない。
 ずかずかと教室に入っていき、男たちに割り込み、「ベル!」と親しさを見せつけるかのように愛称呼びをかましてみせた。
 誰が見ても明らかなほどにマリアベルを溺愛する、公爵家の嫡男、アーロン・アークライト。
 そんな男がやってきて、「さあ行こう」とマリアベルに手を差し出して微笑みかけるものだから、他の男たちも流石に引いていく。

 なんとかマリアベルを連れ出すことに成功し、ともに廊下を歩くアーロンだったが、内心穏やかではない。

「……ベル。いつもああなのかい?」
「ああ、とは?」
「その……さっき、男子に囲まれていたよね?」
「そのことでしたら……そう、ですね。私の魔法や、魔研に興味のある方が多いようで。魔研に興味があるならミゲル様に、と伝えてはいるのですが……」

 アーロンは、思う。魔研じゃなくて、きみに興味があるんじゃないかなー!と。
 しかし彼女は、

「やはり王立学院の生徒ともなると、勉強熱心なのですねえ」

 なんて感心している。

「たまに、一緒に魔法の練習をすることもあるのですよ!」

 と、にこっと笑顔で言うものだから、アーロンは頭を抱えたくなった。
 どうも、既にマリアベルと昼休みデート済みの男がいたらしい。
 魔法の練習というのは口実で、妖精姫とご一緒したいだけだと思うのだが……。
 領地にこもり、血を浴び。令息たちに逃げられ続けていた過去のあるマリアベルに、自分が異性にモテている、という発想はないようだ。
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