鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
 貴族は私服登校の人が多いのに、マリアベル入学後からアーロンも制服登校! ちなみに、これは魔研会長で、アーロンの昔なじみの友人でもあるミゲル情報である。
 学食の代金なんて簡単に払えるはずなのに、お弁当を持参して一緒に食べている!
 寮もあるのに、毎日マリアベルをマニフィカ家まで送迎!

 これだけでも「そりゃわかるだろ!」状態だが、さらには――。

「ベル。今日もきれいだね。でも、きみは昔からずっと輝いてるよ」
「お弁当、手作りなんだよね。ベルはいつだって頑張り屋さんだ」
「よかったら、おかずを交換しない?」
「魔研での活動はどう? 実は僕も、武術だけでなく魔法の腕ももっと磨くべきだと思って。入会を考えてるんだ」

 ベル、ベル、ベル、と昼休み中ずっと、マリアベルに笑顔を向け続けているのである。
 コレットから見たって、アーロンはたいそうな美丈夫だ。
 その金の瞳にも、心地よいテノールボイスにも、たしかな愛情がにじんでいて。
 甘くとろけるはちみつ色の瞳は、自分に向けられたものではないとわかっている。
 なのに、近くにいるだけでドキっとしてしまう。
 他の女生徒がアーロンに憧れ、きゃあきゃあと盛り上がるのも理解できる。

 マリアベルに合わせた行動の数々と、この態度。
 アーロン様って、マリアベル様のことが好きなんだな、と気が付かないほうが無理である。
 これでわからない者がいたら、相当に鈍感か、恋愛事への興味がこれっぽっちもない人のどちらかだろう。

 そして、それだけの好意を向けられるマリアベルはと言えば。
 ときめく様子もなく、普通に対応し続けている。
 二人を間近で見続けるコレットからすれば、「ええ……? どういうこと……?」状態である。
 もっとなんかこう、照れるとか、マリアベルからも甘い言葉や態度を返すとか、そういうものがあってもいいのではないだろうか。
 アーロンの一方通行のようにも見えるが、マリアベルが嫌がる様子はなく。
 かといって、同じ気持ちを返しているようにも見えなくて。
 二人と最近知り合ったばかりのコレットは、混乱していた。
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