鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~

ご縁<<<<<領地の平和と肉

「マリアベル様! 息子が森に入ってしまったのです! 魔物を見たと話す人もいて……。どうか、息子を」

 見回りを兼ねて領地を散歩するマリアベルに、一人の女性が駆け寄ってくる。
 今日は午後から予定が入っていたが、午前の今は空いていた。
 時間があれば、マリアベルは修業か見回りのどちらかを行うことにしているのだ。
 マリアベルを探していたのだろうか。彼女はぜえぜえと息を切らしながらも、息子を助けて欲しいと必死に訴える。
 領民の願いに対する、マリアベルの言葉は、もちろん。

「わかった! 任せて! 息子さんは私が連れ戻すから!」

 であった。
 12歳ほどとなったマリアベルは、積極的に魔物を狩りに出るようになっていた。
 過去に魔物が大量に出て以来、マニフィカ領は他の地と比べて魔物の数が多いままなのだ。
 急いで森に向かったマリアベルは、一般の人でも棒や農具で倒せる雑魚をいなしつつ、男の子を探す。
 このくらいの雑魚ならどこにでもいるものだが、マニフィカ領は、今も強力な魔物の数が多かった。

「どうして龍脈なんてできちゃったんだろうなあ……」

 マリアベルの小さな唇から、はあ、とため息が漏れる。
 そんなこと言ったって、できてしまったものはどうしようもないのだが……。
 龍脈なんてものができなければ、マニフィカ領が困窮することもなかったのだ。
 領主の娘として、苦々しく思うのも当然だ。

 マリアベルが5歳のころ――魔物の大量発生の時期だ――マニフィカ領内の森で、目視できるほどに魔力が奔出する場所が見つかった。
 魔力とは、一部の人間や魔物の中に存在するものとされているが、まれに、自然の中で激しくあふれ出すことがあるのだ。
 そういう場所のことを、龍脈と呼ぶ。
 運の悪いことに、マニフィカ領には龍脈が出現。
 最初ほどの勢いはないものの、時が経ってからも魔力の濃度は濃いままだ。
 魔物は、魔力に引かれて集まり、活発になり、増えやすくなる。
 マリアベルが成長してからも、マニフィカ領は通常以上の警戒が必要な状態であった。

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