鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
 始業前。授業のあいま。昼休み。
 そういった時間――アーロンがそばにいないタイミングだ――を狙って、クラリスはマリアベルへの嫌がらせを続けた。
 あるとき、マリアベルとコレットから、お菓子でも入っているのであろう小袋を奪い取った場面をアーロンに見られてしまったときは、肝が冷えた。
 以降、彼がマリアベルたちと一緒にお弁当を食べるようになったのは、おそらく、自分のようにマリアベルに突っかかる人間を追い払うためだろう。
 それまで、アーロンはマリアベルとは別に昼食をとっていたはずなのに。
 クラリスのやったことが原因で、アーロンはさらにマリアベルにべったりになってしまったのだ。


 魔法の腕ではとても敵わないし、言葉で攻撃しても、さらにアーロンとマリアベルの距離を縮めるだけ。
 マリアベルを傷つけようとする場面を見られた今、正攻法でアーロンの気持ちを得られるとも思えない。
 アーロンから見れば、クラリスはきっと、大切な人を傷つける悪い女だ。
 その証拠に――

「あ……」

 移動教室の途中、クラリスは、前方からアーロンが歩いてきていることに気が付いた。

「あ、アーロン様、あの……」
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