鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
 マリアベルは、入学直後からずっと、クラリス・グラセス伯爵令嬢からの嫌がらせを受けていた。
 自身が少々特殊なのは理解していたから、王立学院に入ればこうなるだろうと思っていたし、クラリスはさほどしつこくもないしで、あまり気にしていなかったのであるが……。
 魔研でできた友人・コレットまで標的になるとなれば、話は違った。
 もしもクラリスをはじめとする他の女子が、コレットを巻き込むようなら、なんらかの「対応」をしなければならない。
 そう、考えていた。
 しかし、どうやらそんな必要はなかったようで。

 お昼休みにクラリスがコレットを標的にしたところを、アーロンが仲裁に入ってくれたあの日から、クラリスがつっかかってくることはなくなった。
 以降、アーロンはお弁当まで持参して、マリアベル、コレットと昼食をともにしている。
 流石のマリアベルでも、彼は自分たちを守ろうとしているのだと、気が付いていた。

「アーロン様。私とコレットを気にかけてくださって、ありがとうございます」

 いつも通りの帰り道、馬車の中で感謝の気持ちを伝えてみれば。
 想い人の微笑みと感謝の言葉が直撃したアーロンからは、あまりの嬉しさに「くっ……」と声がもれた。
 ときめきで苦しくて、胸まで押さえている。

「アーロン様?」

 マリアベルが、その青い瞳を心配げに揺らしてアーロンを覗き込む。
 ただでさえ、馬車の中で隣に座っているというのに。さらに彼女に近づかれたアーロンはといえば、気の利いたことも言えずに硬直してしまっていた。
 マリアベルの手の甲にキスなどする彼であるが、マリアベルからそういったことをされることはないため、相手からの接近には弱いのであった。
 マリアベルもアーロンの反応を不思議には思ったが、彼はたまにこういうことがある。
 それ以上の追求はせず、話題も移り変わり。二人は、いつも通り仲睦まじく下校した。
 


 魔法研究会という居場所も得て、コレットという友人もでき。
 魔研会長のミゲルは、相変わらずの魔法オタクで、怒涛の質問攻撃などもしてくるが、魔法好きなだけあってとても友好的。
 幼馴染のアーロンは、昔と変わらずよくしてくれる。
 アーロンが近くにいてくれるおかげか、嫌がらせも減って。
 マリアベルの学園生活は、充実していた。
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