鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
 一方、マリアベルをいじめていたその人、クラリス・グラセスは、灰色の学園生活に突入していた。
 ずっと好きだった王子様のような人は、毎日毎日、他の女――マリアベルの送迎をして。
 お昼休みも、弁当を持参までしてマリアベルのそばにいる。
 アーロンは、マリアベルには愛しくてたまらない、といった笑みを向ける。なのにクラリスには、作り物の笑顔すら向けてくれない。
 婚約こそまだだが、クラリスが二人に割って入ることは、もう叶わないだろう。
 自身の恋の終わりと、二人の仲のよさを突き付けられる毎日は、あまりにも苦しかった。
 クラリスは、伯爵家の娘で、威勢もいいほうだったから、入学当初は取り巻きのような女子もいた。
 しかし、俯きがちになり、勢いがなくなってからは、人が離れていき。
 今度は、クラリスが独りぼっちになってしまった。

 昼休みの途中、クラリスは、学院二階の廊下から中庭を見下ろす。
 そこには、仲良さげに笑い合いながら食事をとる、マリアベルたちの姿があった。

「っ……」

 魔法研究会の者や、アーロンの友人だろうか。時折、彼らに声をかけていく者もおり、とても楽しそうだ。
 下に見ていたマリアベルが、自分とは正反対の学園生活を送っているように思えて、つらくて、惨めで。
 クラリスは、きゅっと唇を噛みながらも、その場をあとにした。

 
 そんな状態になって、しばらくの時が経ったころ。
 クラリスは、アーロンに代わる新たな「王子様」を見つけることとなる。
 誰って――憎き恋敵だったはずの人、マリアベル・マニフィカである。
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