鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
 その日は、気持ちよく晴れていた。
 日の光は降り注いでいるが、強すぎることはなく、心地よい程度にほどよく風も吹いており。
 外で食事をとるには、いい日だった。
 普段通りであれば、想い人とその友人とのランチタイムに笑顔を見せるアーロンであったが、この日ばかりは違った。

「……ベル。この状況は、一体……?」

 目の前に広がる光景に呆然とし、笑顔が失われている。
 その理由は――。

「ベルお姉さま、コレット。こちらも食べてみませんか?」
「じゃあ、少しもらおうかしら」
「わあ……! 美味しい……!」
「本当! 流石グラセス伯爵家ね」
「そんな……。ベルお姉さまとコレットのお弁当だって、とっても素敵ですわ」

 私も自分で作ろうとしたけれど、難しくてできなかったの。
 そう付け加えると、突如加わったメンバー……クラリスは、照れくさそうに笑った。
 アーロンの混乱の理由。それは、マリアベル、コレット、アーロンのいつものお弁当メンバーに、何故かクラリスが加わっているからである。
 しかも、今日が初めてだというのに、すっかり溶け込んでいる。
 女子2、男子1だった比率が、女子3、男子1となり、アーロン・アークライトは彼女らのきゃっきゃとした雰囲気に入り込めず、置いてきぼりにされていた。


 クラリス・グラセス伯爵令嬢は、マリアベル・マニフィカを嫌っていた。
 そして、名門公爵家の嫡男である自分には、好意を抱いている様子だった。
 ……はず、なのだが。今は、アーロンには目もくれず、マリアベルたちと笑い合っている。

 説明を、説明をして……! なにがあったのか教えて……!

 和気あいあいとする女子たちを前に、アーロンはくっとなにかに耐えるような顔をした。
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