鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
 今日もアーロンは、1年生の教室までマリアベルを迎えに行った。
 そして、マリアベル、コレット、アーロンの三人が、敷物の上でお弁当を広げ始め、いつも通りのランチタイム、となったころ。
 どうしてか、そこにクラリスが現れて。

「あ、あの。ご一緒してもよろしいでしょうか……?」

 ぽっと頬を染め、もじもじとしながらマリアベルに聞いた。
 彼女は小さなバッグを持っており、中にはお弁当が入っているようだった。
 マリアベルとコレットは、「もちろん」とクラリスの参加を快諾。
 女子三人の空間を作り始め、今に至る。
 アーロンが知っているクラリスは、マリアベルとコレットをいじめの標的にしていた。
 それがどうしてこうなったのか、学年もクラスも違うアーロンにはさっぱりである。
 マリアベルのことを「ベルお姉さま」と呼んでいるのも、気になって仕方がない。
 家の事情で領地にこもりっきりだったマリアベルに、新しい友人ができたのなら、それは喜ばしいことだ。
 だが、いくらなんでも突然すぎる。

「あ、あー……。ベル。いつの間にクラリス嬢と親しくなったんだい?」

 盛り上がる彼女らにも届くよう、少し大きめの声でアーロンが問う。

「ベルお姉さまとコレットは、私の恩人なのですわ!」

 彼の疑問に食い気味に答えたのは、マリアベルではなくクラリスだった。
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