鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
――ベル、僕のことも気にかけてくれるんだね!

 と、アーロンが思ったのも束の間。
 やはり女子のみで話が進み、クラリスにはふふん、と笑みを向けられた。

「……!」

 アーロンも、クラリスの挑発的な態度に気が付き、二人のあいだではばちばちと火花が散っている。
 もしもこれが、男子がマリアベルを誘う場面であれば、なにがなんでも邪魔したことだろう。
 しかし、クラリスは女子。
 それも、コレットも含めた「女子会」をしたいと話している。
 男子であるアーロンが、マリアベルから「女子会」の機会を奪うことは、できなかった。


 お弁当タイムにクラリスが混ざるようになってから、少しの時が経過していた。
 女子三人はすっかり仲良くなり、こうして休日の予定を立てるまでになっている。
 クラリスはアーロンにライバル心があるようだが、完全に無視されているわけでもない。
 もちろん、マリアベルとコレットは、一人混ざる男子と化したアーロンにも、普通に接してくれる。
 しかし、疎外感。休日の予定も「女子三人」前提で話が進んでおり、疎外感――!
 邪魔だどけと割って入れない分、男子よりも女子のほうが面倒かもしれない。
 そんな風に思いつつある、アーロンであった。
 
 だが、ここでめげる男ではない。
 入学当初と変わらず、登下校はマリアベルと二人きり。
 そろそろ寮暮らしに移行しようと思う、と彼女は話してはいるが、まだ自分と一緒にいてくれるだろう。
 なにやら魔力目当てと勘違いされてしまったが、プロポーズだって済んでいる。
 それになにより――。

――勝ち誇っていられるのも今のうちだ、クラリス・グラセス伯爵令嬢……!

 女子会であることを強調され、のけ者にされようと、アーロンはまだ負けていない。
 むしろこれから、マリアベルと自分の関係に、はっきりとした名前がつくはずだ。
 婚約者、という名が。
 そう、マリアベル・マニフィカに婚約を打診すると、アークライト家が正式に決定したのだ。
 そう日もかからず、この話はマニフィカ家にも届くだろう。
 だからアーロンは、クラリスに挑発されようと、男子だからとのけ者にされようと、まだ余裕がある。
 今度はアーロンが、己の勝ちを確信したかのように、ふっと笑みを浮かべた。
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