鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
「あの、お父様。私……」

 婚約の話は、受けられません。
 
 そう続けようとして、言葉に詰まる。
 アーロンがいつも優しいから、自分たちは対等であると勘違いしそうになるが、マリアベルとアーロンの――マニフィカ家とアークライト家のあいだには、明確な力の差が存在する。
 伯爵家の、それも財政難に陥っている家の娘が、公爵家からの申し出を断ることなどできはしない。
 かといって、アーロンの期待に応えられるかどうかもわからないのに、手放しで婚約するわけにもいかない。

――正式に婚約する前に、一度アーロン様と話し合うべきね。

 相手のいることなのに、一人でぐるぐると考えていたって仕方がない。
 マリアベル側に拒否権はないが、事情を話してアーロンに再考してもらうことはできるはずだ。
 そのうえで、アーロンに選択してもらえばいい。
 そう考えると、マリアベルは、婚約を受けるとも受けないとも答えないまま、今日のちょっぴり豪華な食事を楽しむ方向に切り替えた。
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