鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
「好きだ。ベル。僕と結婚して欲しい」
「えっと……?」

 ここまでされても、マリアベルはいまいち理解できない様子で戸惑うだけだった。
 やっぱり強敵だなあ、とアーロンは苦笑する。

「立場を忘れて結婚を申し込むほどに、僕はずっと前から、きみのことが大好きだったってこと。僕はきみのことが大好きで、人としても尊敬しているから、結婚したいんだよ」
「だい、すき……」
「そう。大好き」
「つ、強いところがですか」
「わあ、頑固~」
「が、頑固ってなんですか!」
「いや、強いところ、でも間違ってはいないけどね……。間違ってないけど、違うというか……。この先も長期戦になりそうだなー」
 
 はは、とアーロンは和やかに笑った。
 
「それで? 僕との婚約は、前向きに考えてもらえそうかな?」
「えっと……。期待に応えられるかどうかわかりませんが、アーロン様がそれでもいいとおっしゃるのでしたら……」
「なら、僕はきみが思う『期待』をして婚約を申し込んでいるわけじゃないから、もう解決してるね。これからは婚約者として、改めてよろしくね。ベル?」
「は、はい……。よろしく、お願いします……?」

 アーロンの笑顔と勢いに押され、はい、と答えてしまってから、気が付く。

――あれ、もしかして、婚約オーケーしちゃった!?

 と。

 アーロンに事情を話し、再考……できれば、アーロン側からこの話をなかったことにしてもらうつもりだったのに。
 気が付けば、婚約を承諾する流れになっていた。
 あれ? あれれ? 予定と違うわ! と思いはするものの、彼と婚約することを嫌だとは思わない。
 押し切られたことに気が付いてあわあわするマリアベルの隣で、アーロンは、ふふ、と愛おし気に彼女を見守っていた。
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