鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~

絶好調の男と、挑んでは散っていく学生たち

 その後、両者の合意もあったということで、婚約の話はとんとん拍子に進んだ。
 多くの者が「おそらくそうなるだろう」とは思っていたものの、正式に婚約が結ばれたことが判明すると、学院の者たちは男女問わず荒れた。

「あ、アーロン様が、婚約……!?」
「あああああ! 妖精姫があいつに持っていかれたあああああ!」
「グラセス嬢かコレットちゃんといい仲なんじゃなかったのか!?」

 女子は、憧れのアーロン様がついに手の届かない存在になってしまったことに。
 男子は、妖精姫が結局は「公爵家のあの男」に持っていかれたことに。
 ……一部の者は、マリアベルとクラリス、コレットの女子同士の関係に夢を見ていたのに、打ち砕かれたことに。
 アーロンとマリアベルに想いを寄せていた者たち……と、女子同士の組み合わせに盛り上がっていた者たちは、夢の終わりを突き付けられていた。


 学院入学後、多くの男子生徒にアピールされていたマリアベルであったが、婚約発表後は流石にそれもほとんどなくなった。
 元からマリアベルにベタ惚れだったアーロンが、正式に婚約者となったのだ。
 マリアベルに下手なことをすれば、彼の怒りに触れることになる。
 これまではあくまでも幼馴染だったから、アーロンは他の男子に口を出せる立場ではなかった。
 でも、もう違う。自分の婚約者に近づくな、とはっきり主張できるようになったのである。
 名門公爵家の嫡男……それも、婚約者を溺愛する男を敵にまわしてまで女子を口説こうとするほど、学院メンバーの頭もゆるくはなかった。
 以前なら、昼休みの始めには男子生徒に囲まれていたマリアベルであったが、婚約発表後はそれもない。アーロンは、彼女に群がる虫を追い払うことができたと一安心したものだった。
 だが、マリアベルに近づかなくなった代わりなのか――。
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