わたしだけの吸血鬼



「朝は災難だったねえ、流衣」
「本当に夜紅さんは容赦ないんだから……」

 昼休み、私は凪沙と二人で中庭のベンチでお弁当を食べていた。一時間目の出来事をからかわれ、私は不貞腐れ気味にハンバーグを口に入れた。
 贔屓してくれとは言わないが、もう少しお目こぼしがあってもいいのに。
 
「噂をすれば……あれ、夜紅先生じゃない?」
「あ、ホントだ」

 凪沙が指をさした方に視線を向ければ、そこにいたのは夜紅さんだ。渡り廊下を挟んだ反対側のベンチに座り目を瞑っている。

「……寝てるのかな?」
「よっしゃ!さっきの仕返しに悪戯してやろっ!」

 まぶたに目ん玉でも書いてやろう。私はペンケースからペンを取り出した。安心してください。水性です。
 
(くっくっく。仕返しじゃ!)

 私は授業中にうわの空だった自分を棚上げして、夜紅さんにこっそり忍び寄った。
 キャップを外し、試し書きしようとしたその時、夜紅さんの手が私の手首を掴んだ。
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