わたしだけの吸血鬼
◇
「朝は災難だったねえ、流衣」
「本当に夜紅さんは容赦ないんだから……」
昼休み、私は凪沙と二人で中庭のベンチでお弁当を食べていた。一時間目の出来事をからかわれ、私は不貞腐れ気味にハンバーグを口に入れた。
贔屓してくれとは言わないが、もう少しお目こぼしがあってもいいのに。
「噂をすれば……あれ、夜紅先生じゃない?」
「あ、ホントだ」
凪沙が指をさした方に視線を向ければ、そこにいたのは夜紅さんだ。渡り廊下を挟んだ反対側のベンチに座り目を瞑っている。
「……寝てるのかな?」
「よっしゃ!さっきの仕返しに悪戯してやろっ!」
まぶたに目ん玉でも書いてやろう。私はペンケースからペンを取り出した。安心してください。水性です。
(くっくっく。仕返しじゃ!)
私は授業中にうわの空だった自分を棚上げして、夜紅さんにこっそり忍び寄った。
キャップを外し、試し書きしようとしたその時、夜紅さんの手が私の手首を掴んだ。