わたしだけの吸血鬼

(顔があつ……!)

 それ以上見ていられなくて、ふいっと目を逸らす。
 夜紅さんに私の気持ちがバレてはいないだろうかと、にわかに心配になる。

(夜紅さんって鈍感なのかな……?)

 毎日、片手じゃ足りないくらい胸をときめかせているのに、夜紅さんの態度は何も変わらない。
 恋心がバレていなくて一安心と言いたいところだけど、単に相手にされていないだけかもしれなくて……なんか悔しい。

 一年一緒に暮らしているけれど、夜紅さんには謎が多い。
 東雲夜紅という名前は、私との血縁関係を示すために便宜上使われている偽名だ。
 二十八歳という年齢も本当かどうか怪しい。
 両親とは昔からの知り合いだというが、それにしては歳が離れすぎている。両親とどこでどう知り合ったのか。夜紅さんは決して教えてくれなかった。

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