わたしだけの吸血鬼

 夕食後は自室で宿題をこなしお風呂に入ると、あっという間に就寝の時間を迎える。
 目を瞑り、ベッドの中に潜り込んではみたものの、一向に睡魔は訪れない。

(ああ、今日はダメな日だ……)

 私は寝入るのを諦め、ベッドから起き上がった。時計を見ると、時刻は夜の二時。丑三つ時と呼ばれる、魔の物が好んで動き出す時間帯だった。奇しくも今日は新月。月も見えないこんな夜は、何に遭遇してもおかしくない。

 時々、こんな風に胸がざわついてどうしても眠れなくなる時がある。

 両親がいないということは、真っ暗闇を灯りもなしに歩いているようなもの。
 唯一、頼れるのは赤の他人の夜紅さんだけ。
 夜紅さんに見捨てられたら、私はひとりぼっちになってしまうのではないか。悪い想像ばかりが頭の中を支配し、たとえようのない不安に襲われてしまう。
 喉の渇きを覚えた私は階段を下り、リビングに向かった。
 ソファに身体を預ける見慣れた背中に、ホッとしてしまう。
 
「どうした?」

 夜紅さんはパジャマ姿の私がやって来ても、驚きもしなかった。

「なんか……眠れなくて」
「隣、くるか?」
「うん」

 私は夜紅さんの左隣に腰掛けた。ソファの上で膝を抱えて丸くなる。
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