わたしだけの吸血鬼
転校生
中間テストが終わり、夏休みの訪れをいまかと待ち焦がれるようになった六月某日のこと。
朝から日差しが照りつけ、早くも蝉が鳴き出したある朝。
結美先生がホームルームに一人の生徒を連れてやって来た。
それまでやかましかった教室がシンと静まり返り、皆の注目が結美先生の隣に立つ生徒に向けられる。
「結美センセー!その人だれですか?」
「転校生です。さあ、自己紹介して」
「灰谷士門です。よろしく」
士門くんが微笑みかけると、きゃあっと女子が黄色い悲鳴を上げた。
「超かっこいい!」
「イケメン!」
士門くんが小さく手を振ると、更に悲鳴が上がる。サラサラの黒髪、切れ長の瞳。やや幼い甘い顔立ち。
ニコリと笑うと世間の人気を掻っ攫うアイドルよりも可愛い。
普段は夜紅さんの熱狂的なファンで知られているカースト上位の女子グループも士門くんにすっかり心を奪われていた。