わたしだけの吸血鬼
「あ、夜紅先生」
職員室までやってくるとちょうど夜紅さんが入口から出てくるところだった。
夜紅さんは私の隣を見て、ギョッと紅い瞳を丸くした。
「士門か……?」
「久しぶりだね、夜紅」
士門くんがニコリと微笑むと、夜紅さんはさも不愉快そうに眉間にシワを寄せた。
「東雲さん、ノートを運ぶのはここまででいい?今から先生と二人きりで話があるんだ」
「あ、うん……。手伝ってくれてありがとう」
「どういたしまして」
夜紅さんと士門くんは連れ立って廊下を歩いて行った。私は結美先生の机にノートを置くと、二人のあとをダッシュで追いかけた。
(士門くん、夜紅さんの知り合いだったんだ)
親しげな様子に好奇心が刺激される。
夜紅さんは自分の話をほとんどしない。どこに住んでいたとか、どういう人と友人だったのかとか。私は夜紅さんのことを知らなさすぎる。だからこそ、秘密の一端をどうしても知りたかった。