わたしだけの吸血鬼
二人に追いついた私は、尾行に気づかれないように距離をとりながらついていった。
(どこに向かっているんだろう?)
二人が向かっていたのは校舎の最上階、階段を昇りきったその先にある屋上だった。入口には鍵がかけてあるはずなのに、士門くんはドアノブを造作もなくひねり扉を開け放った。
私は屋上には入らず、入口の扉の裏に隠れ、こっそり聞き耳を立てた。
「何しにきた」
「八十年振りだっていうのに、酷い言い方だな?年長者を敬う心はないのか?」
士門くんは夜紅さんをせせら笑った。教師に対するものとは思えない尊大な態度だった。
(八十年振り?年長者?どういうこと?)
私は絶賛混乱中だった。
だって、どう見ても夜紅さんの方が年上だ。八十年振りというのもおかしい。何かの比喩?それとも冗談?
しかし、夜紅さんは士門くんの態度を注意することも、年齢について言及することもなかった。