わたしだけの吸血鬼
(夜紅さんは……人間じゃないの?)
地面が割れて真っ逆さまに堕ちていくような、そら恐ろしい気持ちに襲われる。
私は授業が終わると、凪沙の誘いも断り何かに突き動かされるように走って家へ帰った。スクールバッグを廊下に置くと着替える時間を惜しみ、普段は夜紅さんが使っているお父さんの書斎を漁る。真実が知りたい一心だった。
願いが通じたのか、望んでいたものはすぐに見つかった。
お父さんとお母さんの昔のアルバムだ。リビングの棚に置いてあるのは私が生まれてからのもので、結婚する前のアルバムはこの書斎に保管されていた。
夜紅さんが両親の残したこの家に住み始めた当初、書斎を一緒に片付けたことがあった。夜紅さんは両親のアルバムを見つけてはしゃいでいた私からアルバムをとりあげた。
『これは預かっておく。昔の写真なんて見るもんじゃない』
単に恥ずかしがっているだけだと思っていたけれど、本当は違う意味があったのかもしれない。
……きっと、このアルバムには私に見せたくない何かが隠されている。
学生時代から交際を始めたという両親の思い出を振り返りながら、アルバムを一ページずつめくっていく。しかし、どれだけめくれども、なんの変哲もないカップルの日常風景ばかりが続いていく。