わたしだけの吸血鬼

(私の早とちりだったのかな?やっぱり吸血鬼なんているわけ……)

 いるわけないと断言しかけたその時、アルバムをめくっていた私に衝撃が走った。

「これ……」

 一枚の写真に目を奪われる。二十代のお父さんとお母さんが微笑むその後ろ。窓に反射して映っているのは夜紅さんだった。カメラからそっぽを向いているが、間違いない。私が夜紅さんを見間違えるはずがない。
 写真の日付は二十五年前のものだ。今と寸分違わぬ姿に、ぶわっと鳥肌が立つ。
 若作りや美容整形ではとても説明できない。

(私は夜紅さんのことをどれほど知っているのだろう……)

 夜紅という名前の他には?
 本名は?出身地は?
 私と暮らす前はどこに住んでいたの?

 当たり前だと思っていた日常が、音を立てて崩れていく。

「ただいま」

 玄関から夜紅さんの声が聞こえてきて、我に返った私は慌ててアルバムを元通りにしまった。
 
「お、おかえり!夜紅さん!」

 そして、何事もなかったかのように、夜紅さんを出迎えに玄関へと走った。

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